あかあかと 日はつれなくも 秋の風 かえりみすれば 月は上りぬ
私たちは二つの宇宙を生きている。外に広がる宇宙と心に広がる宇宙。昔々、男が薬売りの翁に誘われ、壺の中に入り、別世界に楽しんだ。翁がくれたのは「沈香」。不安の風が凪ぎ、記憶の落ち葉に埋づもれる。香りとともに光を増す心の世界。人は互いを物でなく時間を超えた幻として見るようになる。そこには幼児、青年、壮年だった「私」が生きている。今はいない大切な人も生きている。楽しかった悲しかった思い出も星のように光っている。